日本ユニシスとの共同ゼミ「応用情報学最先端A」でUIについて説明する坂本KCGI准教授(京都駅前サテライト)
産学が連携して次代を担うIT人材を育成しようと,京都情報大学院大学(KCGI)は応用情報分野の最先端企業と共同による講義やゼミを開講しています。2019年度秋学期には大手ITサービス企業の日本ユニシス株式会社(本社:東京都江東区,平岡昭良社長,東証1部上場)の総合技術研究所(羽田昭裕所長)とゼミ「応用情報学最先端A」を,武田康廣教授が代表取締役を務める株式会社ガイナックス京都などと連続講義「実践アニメ製作論」を相次いで開講。学生たちは第一線で活躍中の講師陣と触れ合い,議論を深めながら,高度な実践能力と創造性を磨いています。
◇「応用情報学最先端」~若者の柔軟な発想・創造力を新たなイノベーションに
日本ユニシスとの共同ゼミ「応用情報学最先端A」は2019年11月から京都駅前サテライトで開講中。「企業研究者によるITの最新事例紹介」を掲げ,KCGI教員,同社研究員,学生の交流を通じて,未来のIT業界を担う若者の柔軟な発想・創造力を新たなイノベーションにつなげることを狙いとしています。共同ゼミは2020年1月まで8回にわたって開講します。
同研究所二〇四六室長の秋山功KCGI教授,同研究所研究員でKCGグループの「未来環境ラボ」にも中心となって関わる坂本啓法KCGI准教授に加え,同研究所の研究員ら7人がそれぞれのテーマで行うオムニバス講義形式で,学生のレベルに合わせてさまざまなITの基礎的な部分を説明しつつ,最先端の実例を紹介。これにより,学生たちが「自分ならこの技術をどう使って社会全体にイノベーションをもたらすか」と応用を考え,自発的に技術に関するより深い部分を調査していくことを目指しています。
ユーザーインターフェイス(UI)などに関する研究開発を手掛ける坂本准教授の担当回では,UIの区分,特にタッチ,ペン(手書き文字認識),音声,空中ジェスチャ,VR,ARなどによるNUI(ナチュラル・ユーザーインターフェイス)について,代表的な関連技術・製品とともに解説されました。具体例として坂本准教授が開発した「空中における文字入力・文字認識」を利用した書道ソフトなどの実物が紹介され,赤外線センサーを活用し,空中で筆を振るって文字を書き認識させる実体験に,学生たちは興奮した様子でした。
◇「実践アニメ製作論」~文化の都・京都で学ぶ意義
ガイナックス京都などと共同の連続講義「実践アニメ製作論」は2019年10月から翌2020年2月まで12回にわたって京都本校 百万遍キャンパスで開講。武田教授のほか,プロデューサーとして「天元突破グレンラガン」などを手掛けた赤井孝美・米子ガイナックス株式会社社長らが講師として登壇し,アニメの企画・制作時の具体的な方法論などについて,実際のアニメ業界での実例を示して解説します。
赤井社長の担当回では,バレーボールが題材の新作アニメの企画を想定し,味方だけで少なくとも29人のキャラクターが必要になると具体的に設定。1クール13本のアニメが仮にヒットすれば,第2シーズンが13本制作されるので,物語を盛り上げるために,最低でも2~3の強豪チームの敵,約30人を登場させる必要があり,計60人近くのキャラクターを描き分ける必要があることが説明されました。赤井社長は「高校のスポーツものでは,チームメンバーの性別・年齢・体型はほぼ同じ。描き分けるのが一番大変なジャンルで,そのためにはテクニックが必要です」とアニメ制作の裏にある苦労を明かし,「主人公とライバルの関係や,他のキャラクターごとの性格や背景などをそれぞれ『対照』させながらキャラクターを創造することが大切だ」と,実際にホワイトボードに流麗なキャラクターのイラストを描き分けながら力説しました。
講義後,赤井社長は「日本の文化としてのアニメーションを,文化の都である京都で教えることに意義があります」と強調。「アニメーション業界は今,過渡期にあり,ITの発達なども相まって『世界は映像を求めている』と強く感じます。これからは東京一極集中でなく,地方で独立した個人作家が,ITを活用してアニメを制作・発信する時代が必ず来るので,講義を通じてそのような人材を育てていきたい」と話していました。
ガイナックス京都などと共同の連続講義「実践アニメ製作論」でアニメ制作時の方法論を説明する赤井孝美・米子ガイナックス株式会社社長(京都本校 百万遍キャンパス)