京都コンピュータ学院(KCG)は2021年11月20日,日本を代表するゲームクリエイターのヨコオタロウ氏をお招きし,ゲーム業界セミナー・即興シナリオ作成講座を開催しました。
ヨコオタロウ氏(以下,ヨコオ氏)は,株式会社ナムコ,株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントを経て,株式会社キャビアへ入社。デザイナーとして経験を積んだ後,「ドラッグ オン ドラグーン」シリーズや『ニーア ゲシュタルト/レプリカント』のディレクションを担当されています。株式会社キャビアを退社後に株式会社ブッコロを立ち上げ,2017年に『ニーア オートマタ』,2021年4月には『ニーア レプリカント ver.1.22474487139…』をリリース。近年は,スマートフォン向けアプリ『シノアリス』『ニーア リィンカーネーション』や,漫画『君死ニタマフ事ナカレ』『吉野家兄弟』や舞台の原作などでも,幅広く活躍されています。
2021年の東京オリンピック開会式では,ゲーム音楽の楽曲が使用されましたが,選手入場時の曲の一つとしてヨコオ氏が制作に携わる「ニーア」シリーズのBGM『イニシエノウタ』も使用され,話題となりました。 またヨコオ氏は,京都に本店を構えるラーメン店「天下一品」のファンとしても有名で,当日にも会場の校舎からほど近い,本学の教職員や学生お馴染みの店舗で食事をとられてから講演に臨まれました。
当日は,ゲーム業界を目指すためのセミナーに加え,即興でのシナリオ(プロット)作成講座を実施していただきました。ヨコオ氏が学生時代から現在に至るまで,どのように人と繋がってきて,それが業界でも珍しいフリーランスのゲームディレクターとしての活躍や,またゲームだけにとどまらない舞台などでの幅広い活動に役立ってきたのかを事例とともにご紹介くださいました。 今回の講座開催も,まさに人との繋がりの賜物でした。これまで本学は,ゲーム関連の大型勉強会に会場を提供し,学生とともに運営補助にあたるなど協力を重ねてきました。その勉強会にブース出展した企業が,本学を会場としてまた別のイベントを実施するという好循環の中,ヨコオ氏が登壇するゲームイベントが実現しました。
セミナー後の即興シナリオ(プロット)作成講座では,会場内の参加者から希望があがった「白雪姫」をテーマに即興作成を行っていただきました。 ヨコオ氏は「白雪姫」のあらすじ・登場人物の確認を終えると,作品で登場する城や森などのフィールドに加え,森から想起される湖や洞窟などのフィールドを追加し,その場所ごとに何が起こるかや,プレイヤーに何をさせるのかなどを具体的に提案。僅かな時間の間に次々と生まれていく全く新しい「白雪姫」の世界に参加者も引き込まれていました。
特に「白雪姫」でも重要なシーンとなる,毒リンゴで命を落とす場面で,白雪姫が自分自身の影と戦う展開,そして今回の「白雪姫」で,白雪姫を生き返らせる役割を担っていたはずの7人のこびとが,復活の儀式の過程でなんと敵となってボスとして登場してしまうというまさに「ヨコオワールド」全開の内容に参加者も興奮した様子でした。一方でその展開を,プレイヤーが納得し面白いと感じられるシナリオに組み立てていく様子に感動したとの声も多く上がっていました。シナリオ完成後には,どのような狙いで各イベントを挿入したのかを解説してくださいました。作品制作の過程でゲームのプロット作成に悩んだ経験のある学生ほど,「今回の講座で学んだことが活かせそうだ」と喜んでいました。
ヨコオ氏は最後に,プロを目指すうえで自分のつくったものを人に見せた場合,どのような反応や意見が返ってくるのか考え,繰り返し人に見せて確かめる機会を大切にすることの重要さを強調していました。また続けて行われた質疑応答で,さらに学生のうちに取り組んでみたほうが良いことなどについて,惜しみないアドバイスを話してくださいました。
学生の気持ちに寄り添いながら,プロを目指すうえで必要なこと,乗り越えていくべきことや,失敗も成長の糧として積み重ねていって欲しいことなどを語りかけるヨコオ氏の言葉は,不安や迷いを抱える学生たちの胸に響いたようで,講座後には「勇気が得られました」といった感想が多数寄せられました。
今回お話しいただいたいことを,しっかりと学生が活かしていけるよう,本学も引き続き指導に取り組んでまいります。
ヨコオタロウ様,貴重なお話をいただきありがとうございました。