故 萩原KCGI初代学長開発の2機種が「情報処理技術遺産」に

京都情報大学院大学(KCGI)初代学長の萩原宏先生(2014年1月8日逝去)が京都大学在籍時に開発を手掛けた計算機「KT-Pilot」と「京都大学QA-1」がこのほど,一般社団法人 情報処理学会の2013年度「情報処理技術遺産」に認定されました。このうち「KT-Pilot」は,萩原先生と株式会社 東芝が共同開発し京都コンピュータ学院京都駅前校の「KCG資料館」で保存,展示している高速計算機「TOSBAC-3400」(情報処理技術遺産 第一号認定)の原型です。今回の2機種の認定は,萩原先生がコンピュータ開発や電子回路,情報理論,通信方式研究における世界的権威で,日本のコンピュータ界のパイオニアであることを,あらためて証明したといえます。

「KT-Pilot」は1961年に萩原先生と東芝が共同で開発製造した,わが国で初めての本格的なマイクロプログラム方式を採用した機器。論理回路にはシリコンのメサ型トランジスタによる高速度基本回路を用い,並列非同期式高速演算方式を採用。記憶装置にはわが国初の薄膜記憶装置を実装しました。1962年8月にミュンヘンで開催されたIFIPで発表,世界最高速のコンピュータとして高く評価されました。東芝未来科学館(川崎市幸区)で保存,展示されています。

「京都大学QA-1」はグラフィクスの高速処理を1つの目的として,1974年から1977年にかけて萩原先生のほか,京都大学工学部の富田眞治,小柳滋,柴山潔の各氏を中心に,多くの学生の協力を得て開発されました。グラフィクス専用計算機ではなく,より汎用性を持たせた機器で,異なる4つのALU演算,4つのメモリアクセス,1つの順序制御を同時に指定できる方式を採用しているのが特徴です。国立科学博物館(茨城県つくば市)で保存されています。

KCG資料館で保存,展示している「情報処理技術遺産」認定機器は,「TOSBAC-3400」のほか,「OKITAC 4300Cシステム」(2008年度,第一号認定),「NEAC-2206」(2010年度認定),「NEAC S-100システム」(2011年度認定),「シャープ MZ-80K」(2012年度認定)の5機種があります。

萩原宏先生は京都大学工学部卒,同大学院修了,工学博士。情報処理学会会長,日本学術会議会員などを歴任。京都大学工学部教授,龍谷大学理工学部教授,KCG情報工学研究所長などを経て,2004年4月,KCGIの開学と同時に学長に就任し,2008年3月まで務められました。KCGIの展開に多大なるご寄与をされました。2009年4月には瑞宝中綬章を受章されました。