7月3日(水)に,KCGグループの創立50周年記念講演会の第八弾となる,株式会社平安製作所 取締役会長の荒木 邦彦氏による「これからのものづくり“中小企業の挑戦”」を京都コンピュータ学院(KCG)京都駅前校大ホールで開催しました。荒木氏は「これからのものづくりはITなしでは立ち行かない。みなさんはITを,“日本の産業を担う”という気概を持って勉学に励んでいただきたい」と学生に呼び掛けました。講演には一般の方も聴講に訪れました。
はじめに荒木氏は,創業70年以上に及ぶ平安製作所について説明しました。同社は独自のプレス加工技術を駆使した自動車関連部品の製造を,長らく京都に工場を構えて操業していましたが,2003年に滋賀県高島市へ移転。KCG京都駅前校新館が建設される前は,同社の金型工場跡地だったことも明かしました。独自のプレス加工技術の一つ「ドライブプレート一体品」は,オートマチックトランスミッションを搭載している自動車のエンジン始動に用いられる部品で,従来の2部品(プレスプレートと切削歯車)を溶接し組み立てしていたものを,プレスで増肉歯形成形に成功した技術で,コスト30%削減を実現したといいます。荒木氏は「当社は,人件費削減を求めるためだけの海外への工場移転を絶対しないと決めていました。工法の改良にITを駆使した技術を加えて辛抱強く開発した結果,中国など東南アジアで生産されるものよりコストダウンした製品を作りあげることができました」と話しました。
日本の産業界については,即席ラーメンや電球ソケットなど,戦後に生まれた未知の分野の技術開発を紹介したうえで「欧米のものづくりにならい,それに新しい発想を加えて独自技術の文化へ発展させ,世界のものづくりのトップに位置していました。しかし残念ながら,コスト面で敗れ現在の国内空洞化という事態を招いてしまっている」と指摘。「低賃金である中国へ,大挙して工場を移転しましたが,中国の賃金もここ3年で60%上がり効果が薄れてきたため,今度はミャンマーなどへ新天地を求めるというジプシー化が広がっています」としたうえで,アベノミクス効果により若干の円安が進んだ現在が,日本でのものづくりを復活させる機会であると強調しました。
これからの日本のものづくり,技術開発には,次世代に残すためにも数値化し,それにはITが欠かせないとし,「新技術創出を志したなら,環境や状況を把握しながらITを活用して,あきらめず,辛抱強く取り組むべき。それが積み重なれば日本の産業は復活します。みなさんはその先頭に立って頑張っていただきたい」と締めくくりました。
記念講演会「これからのものづくり“中小企業の挑戦”」
http://kcg.edu/50th/events/株式会社平安製作所荒木邦彦氏講演/