スクウェア・エニックスによるゲーム業界セミナーを開催

京都コンピュータ学院(KCG)は2024年2月28日,株式会社スクウェア・エニックス 第2開発事業本部 プロデューサー/ディレクター 時田貴司氏をお招きし,ゲーム業界セミナーを開催しました。

今回は「想像と創造」をテーマに,これまで制作されたゲームと制作時にこだわったポイント,ゲームの企画の考え方,学生へのメッセージという流れでご講演いただきました。

時田氏は,「ファイナルファンタジー」シリーズや「半熟英雄」シリーズをはじめ,『ライブ・ア・ライブ』『クロノ・トリガー』『パラサイト・イヴ』など多くのゲームを制作されています。グラフィックデザイナーとしてゲーム業界に入り,シナリオやサウンドエフェクト,ゲームデザイナーなど幅広いポジションも担当されています。1994年に発売された『ライブ・ア・ライブ』でディレクターを担当されてからは,主にディレクターまたはプロデューサーとしてゲーム制作に携わられています。

また,日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス「CEDEC(セデック)」と連動している一枚(ペラ)企画コンテスト「PERACON(ペラコン)」では時田氏が審査委員長を務めています。KCGはその「PERACON」をプランナー志望者の育成の機会として重要視しており,毎年チャレンジしています。その結果,本学学生の上位入賞が続き,団体ランキングにおいてもトップ5をキープし続けるなど結果を残すことができています。

講演では,これまでに制作された各ゲームについて,どのような条件・環境で制作を行い,その中でどのようなことにこだわって制作されたのかを詳しくご紹介いただきました。

時田氏は過去の経験をもとにゲーム制作を料理に例えながら,カレーの具がバラバラにあって煮込んでもいない段階では,カレーがちゃんと美味しくつくれるかどうかチームの誰も判断ができないので,その状況で出来上がりと美味しさを想像してチームで議論しても効果的ではないとお話しされました。ゲームも同様で,遊びのメイン部分がプレイ可能な状態までを急いで目指し,その段階になってから狙ったとおりの体験や面白さ(カレーでいう美味しさ)が提供できるかどうかをチームで議論し,ゲームの「分かりやすさ」や「触り心地」などを総合的に検討・修正を行うようにお話しくださいました。
またゲーム制作においては,後悔しないようにやり切ることが大切で,その結果,上手くいかなかったところはしっかりと反省して次に活かせばよいので,学生の皆さんにはとにかく尖った作品をつくって欲しいとアドバイスをいただきました。

最後に学生へのメッセージとして「やりたいコト」「できるコト」「求められるコト」の3つについてお話しいただきました。ただし,何事においても常にこの3つを満たすことは難しいため,ゲーム制作やこれから働いて仕事をする際には,例えば,任された仕事が「やりたいコト」ではなかったとしても,その中で自分が「できるコト」「求められるコト」の2つを満たせるように,柔軟かつ前向きに取り組むことが大切だということです。時田氏は自身がそのように意識して何事にも取り組んでいった結果,次々と新しい出会いやチャンスが訪れ,自分自身の可能性が広がったり,成長できたりと良いことが訪れたので,学生にもその点を意識して物事や仕事に取り組んでほしいとメッセージを送ってくださいました。

今回,時田氏より学生が知りたいことや聴きたいことにもたくさん答えていきたいとお話をいただきました。ゲーム制作や企画書についての質問を中心に,ゲーム制作時に発生するストレスや問題等への対応や向き合い方など多くの質問が出続け,最終的に45個にも及びました。時田氏はどのような質問に対しても,質問した学生が前向きに取り組めたり,問題を解決するきっかけになるように丁寧に回答してくださいました。

今回の講演と質疑応答によって学生は「やりたいコト」「できるコト」「求められるコト」の3つを意識しながら状況次第で柔軟に対応していくこと,前向きに物事を進めるための伝え方を意識することを深く学ぶことができました。

時田様,お忙しいところご講演いただき,誠にありがとうございました。