毎年,全世界で同じ日に同じテーマで開かれる世界最大のゲーム開発ハッカソン「Global Game Jam(GGJ)」が2021年1月27日(水)~31日(日),世界的な新型コロナウイルス感染拡大を受け,2009年の初開催以来,初めてオンラインで実施され,京都コンピュータ学院(KCG)デジタルゲーム学系から30名の学生が,提携校の米国ロチェスター工科大学(RIT)と合同参加の形で,オンライン上でゲーム開発のコラボレーションを行いました。
2月3日(水)には,KCGとRITのGGJ参加についての両校の総括として,日米をつないだオンラインミーティング上で,KCGとRITの学生混合9グループが,それぞれの力作ゲームについてプレゼンテーションする最終発表会が開かれました。発表会には,ソニーで長年,PlayStationソフトの開発に携わってきたヴァーノン・ハーマン氏と,米国Blizzard・RiotGames両社で活躍してきたベテランのフリーゲームデザイナー,アレックス・ブラズィー氏がゲストパネリストとして参加し,学生らは世界的に著名なクリエイターである両氏から直接,ゲーム制作に関する貴重なアドバイスを受ける機会に恵まれました。
今年のGGJの開発テーマは「Lost & Found」で,両校の学生で構成された各グループからは,プレイヤーがボスと戦って負けたら,それまでにキャラクターが倒してきた敵から「魂」を回収して復活できるアクションゲームや,プレイヤーが架空の医師となり,患者の嫌な記憶を巧みに取り除いて高評価を狙うパズルゲームなど,ユニークな発表が相次ぎました。中でも,「In Search of Light」と名付けられた謎解き型ホラーゲームは,そのハイクオリティな3Dヴィジュアルと,AIで動くモンスターから逃げつつ施設から脱出するという野心的なコンセプトに対し,業界の第一線で世界的に活躍してきたゲストパネリストらから,「すごく怖い」「最新の技術も導入したいい試み」など,高評価の声が上がりました。また,プレイヤーが明るい画面と暗い画面をうまく切り替えると,それぞれ異なる足場やアイテムが現れ,各ステージをクリアすることができるギミックパズルアクションゲーム「MONOCHROME SHIFT」について,ゲストパネリストらは「シンプルなゲームだがコンセプトがはっきりしており,アイデアが実現できていて良かった」と称賛しました。
同ゲームを制作したKCG学生の弘田さん(ゲーム学科)の「言語の壁や時間的制約から制作チーム内に意見のすれ違いがあるとき,実際の現場ではどのように切り抜けているか?」という質問に対し,ブラズィー氏は「しっかり時間をかけてコミュニケーションが取れない場合は,リーダーの指示は絶対とする『コマンド&コントロール』体制や,最近業界で人気のある,リーダーは目標だけ提示してメンバーが自由に実現していくスタイルが有効だが,どちらが正解・不正解ということはなく臨機応変に開発している」と丁寧に答えていました。
今回のGGJには,104カ国から約2万8千名のゲームクリエイターが世界中で585のバーチャル会場に集い,6千点を超えるタイトルの開発が同時に進行する大盛況ぶりでした。学生の指導にあたったデジタルゲーム学系主任の髙橋功先生は,「遠く離れた日米の学生は,ゲーム特化型チャットアプリ『Discord』を通じ画面共有しつつ,ボイス機能で日ごろ,慣れない英語や日本語でお互い懸命にコミュニケーションを取り,一緒になって作業に打ち込んだ。また,時差の関係で直接話せないときは,チャットでログを残して互いに状況を伝え合いながら開発を進めていた。そんな制約もある中,短期間でこんなにゲームが制作できるなんてすごい,と率直に驚いた。来年は私もぜひ,一緒に作る側の立場で参加したい」と語っていました。
RITは1829年,米国ニューヨーク州ロチェスター市の郊外に創立された工学系の名門大学です。世界でいち早く1991年にIT学科を設置したことで知られ,特にCG・ゲーム・IT分野の教育,実績は全米トップクラスの評価を得ています。KCGは1996年に同校と姉妹校提携を結び,学部編入が可能な留学プログラムを展開しているほか,情報処理科に4年制大学卒業者を対象にしたRIT大学院修士課程留学コースを設けるなど,長年,活発な交流を続けています。