京都コンピュータ学院(KCG)・京都情報大学院大学(KCGI)などのKCGグループの長谷川亘 統括理事長が会長を務める一般社団法人 京都府情報産業協会が主催,KCGとKCGI,それに京都府中小企業技術センターが共催した京情協新春セミナーが2020年1月24日,KCG京都駅前校・KCGI京都駅前サテライト6階大ホールで開かれ,日本電気株式会社(NEC)中央研究所 上席技術主幹の中村祐一氏が,「量子コンピュータ、なぜ動いて、どう使う?」と題して,現在世界各国の企業で開発が進められている量子コンピュータの原理と,現代社会の抱える様々な問題の解決に向けてのその応用について講演しました。
中村氏は,従来のコンピュータが0か1で計算するのに対して,量子コンピュータは0と1を重ね合わせて確率的に計算するもので,どんな用途にも使える汎用型ではなく,膨大なデータの組み合わせの中から「最大値」や「最小値」を追求する「組み合わせ最適化問題」などの解決を得意とする計算機であると,その原理と特徴を説明しました。そして,身近な応用例として,薬の合成の事前シミュレーション,多数のタクシーへの渋滞う回路の毎分ごとの指示,給与や資格などの様々な制約がある勤務表の作成などを挙げ,また,既存のコンピュータと共存可能なので,AI開発や機械学習のアクセラレータとしても役立つことなどを紹介しました。現在の課題は,自然界には存在しない現象である量子の重ね合わせは,マイナス273度の絶対零度付近でようやく実現できて少しのノイズでも消えてしまうので,その状態を大規模に持続的に発生させる技術の開発であるということです。会場を埋めたKCG・KCGIの学生は,分かりやすい例えを用いて,量子コンピュータの不思議なメカニズムを説明する中村氏の講演を興味深げに聞いていました。