世界中で人気のボーカロイド(VOCALOID)「初音ミク」の生みの親で,クリプトン・フューチャー・メディア株式会社(本社:札幌市,創立:1995年)代表取締役の伊藤博之・京都情報大学院大学(KCGI)教授による特別講義が2019年11月29日(金),京都コンピュータ学院(KCG)京都駅前校・KCGI京都駅前サテライト6階大ホールで行われました。伊藤教授は「初音ミク」誕生の経緯や成長ぶり,音声技術・3DCG技術への取り組み,国内外への幅広い展開について映像を交えて説明しました。学生たちはコンテンツビジネスの最先端の話に熱心に聴き入っていました。
「初音ミク」は2007年8月31日に誕生したバーチャルアイドルです。歌詞とメロディを入力すると音声合成で歌ってくれるソフトウェアで,身長158センチ,体重42キロ,16歳の人気「キャラクター」でもあります。国内だけでなく海外でもライブコンサートが開催され,日本文化を世界に発信するクールジャパンの象徴的存在です。
「初音ミクから学ぶデジタルコンテンツの可能性」と題した講義で伊藤教授は,クリプトン社の事業を紹介した上でコンピュータ・ミュージックの基礎を解説し,「ボーカロイドは人間の歌声を合成するバーチャル・インスツルメント(仮想楽器)で,『初音ミク』はクリプトン社がヤマハ社と共同でボーカロイド技術を実用化し,世界で初めてキャラクターと結び付けた,歌うソフトウェアです」と説明しました。
このキャラクター化が功を奏し,音楽だけでなく初音ミクの容姿のイラストやCG,コスプレなどを創作しインターネットに投稿する人たちが現れ,世界規模で創作の連鎖が広がりました。伊藤教授は「(初音ミクは)音声合成がメインで,キャラクターはおまけみたいに考えがちですが,キャラクターが付いていたおかげで,創作の連鎖が巻き起こったと言えます」と説明。また,創作物の権利処理のためにライセンスを公開するとともに,コンテンツ投稿サイト「ピアプロ」を開設。伊藤教授は「ここに投稿された作品は『サイト利用者であればほかの作品に転用して構いません』というルールにしました。創作が生まれやすいような環境づくりに配慮しました」と工夫を明かしました。
「初音ミク」は誕生から12年が経ち,クリエイターによる二次創作・三次創作の結果,歌や音声にとどまらず,ダンスや動画,コスプレ,フィギュアなどへとその表現方法が広がりました。ファッションやオペラ,ロボット,レーシングチーム,ゲーム,和太鼓,テレビの人気アニメキャラクターとのコラボレーションなど,商品化も続いています。伊藤教授は「『初音ミク』の活躍の幅を広げ,多様な分野への展開を図っています」と話しました。
「初音ミク」は国内外で公演,イベント出演などがめじろ押しです。2018年末から2019年にかけヨーロッパ3都市や台湾,香港,上海,北京などでイベントツアーが開催されました。国内でも,8月に京都・南座で「超歌舞伎」が公演されたほか,札幌雪祭りとコラボした「SNOW MIKU」(雪ミク),ジャズや太鼓芸能集団との共演やシンフォニーコンサートなど,大舞台での公演が続いています。
伊藤氏は,2013年4月にKCGI教授に就任しました。国際的な活動と技術革新が認められ,2013年秋の藍綬褒章を受章しています。KCGIとKCGには相互に授業を聴講できる仕組みがあります。KCGIのコンテンツビジネス関連を学ぶ学生だけでなく,KCGのアート・デザイン学系,デジタルゲーム学系,コンピュータサイエンス学系情報処理科IT声優コースなどコンテンツ関連の学生たちも,伊藤教授の取り組みから多くを学ぶことができます。