大海原が学習の場! 海洋IT学外授業を実施,施設見学や船上体験

京都コンピュータ学院(KCG)応用情報学科 海洋ITコースの2016年度新設に伴って設けられた「海洋IT概論」の学外授業として7月22日(金)~23日(土),宮津市の京都府農林水産技術センター,海洋センターの見学と,福井県小浜市の小浜湾における船上体験を実施しました。学生たちは大海原を背景にした施設の見学や船上体験などを通じ,学内では得られない技術や知識を身につけるとともに,海洋・漁業にはITが欠かせないことをあらためて知った様子でした。

海洋IT概論は教室で船舶や漁業のIT化の技術を学ぶ講義が中心ですが,この授業の最終日には学外授業を設定しています。

1日目は宮津市の京都府農林水産技術センターを訪れ,水産の現場から現状の説明や問題やIT化の現状を学び意見交換をしました。

2日目は小浜湾に係留しているKCGの実習船「青雲丸」に乗り,実際に海の上で船の電子機器がどのように動作するのか,どのような問題があるのかを体験しました。また,狭く揺れる船上での操作や,釣りをする流れを体験し,船舶やIT化の現状,IT化できていない点や必要とされている点を実感しました。

7月22日(金)午後に宮津市の京都府農林水産技術センターへ訪れました。

京都府水産事務所所長によるご挨拶と説明
京都府水産事務所所長によるご挨拶と説明。

まず,京都府水産事務所所長によるご挨拶があり,京都の水産全般や,海洋センターの施設概要などについて説明していただきました。

水産資源や養殖などを展示物を使って説明していただきました。
水産資源や養殖などを展示物を使って説明していただきました。
京都府の漁業の仕事に就くための学校「海の民学舎」生との意見交換を行いました。
京都府の漁業の仕事に就くための学校「海の民学舎」生との意見交換を行いました。
海洋調査船の平安丸を見学。
海洋調査船の平安丸を見学。
平安丸の電子機器について説明を受けました。
平安丸の電子機器について説明を受けました。
最後に栽培漁業センター見学しました。
最後に栽培漁業センター見学しました。
栽培漁業センターで育てているあわびの養殖の稚貝。養殖では貝の色が緑色になっていました。
栽培漁業センターで育てているあわびの養殖の稚貝。養殖では貝の色が緑色になっていました。
夕方小浜市へ移動。小浜湾に係留しているKCGの実習船「青雲丸」と対面。
夕方小浜市へ移動。小浜湾に係留しているKCGの実習船「青雲丸」と対面。

2日目,7月23日(土)は朝から「青雲丸」に乗ります。

青雲丸に乗船,必要なものを積み込みます。携帯電話を防水ケースへ入れ,ライフジャケットを着ます。
青雲丸に乗船,必要なものを積み込みます。携帯電話を防水ケースへ入れ,ライフジャケットを着ます。
出港前の船に搭載されている電子機器の説明。魚探,GPS,ソナーなどの舶用電子機器の操作とデータ収集についての説明を受けます。
出港前の船に搭載されている電子機器の説明。魚探,GPS,ソナーなどの舶用電子機器の操作とデータ収集についての説明を受けます。
船内にはネットワークで接続された表示・操作機器があります。下の2つがネットワークにつながれた電子機器の表示・操作装置で古野電機製「NavNet TZtouch」とそのリモコンを2台ずつ装備しています。魚群探知機やGPSプロッターやレーダーやAISの情報を選んで表示して複数組み合わせたり重ね合わせるなど表示をカスタマイズできます。タッチパネルを装備し,スマートフォンやタブレットと同様に指で画面の操作ができます。NavNet TZtouchはスマートフォンやタブレットで画面を表示することも可能です。この船には,オートパイロットが搭載されていて,オートパイロットのコントロール画面にもなります。オートパイロットは目的地を地図上でタッチして設定することで目的地まで自動で舵を切って移動したり,Uターンなどのいくつかのパターンの操船を自動で行うことが可能です。上部の3つ並んでいる表示装置のうち右上の1つがオートパイロット用機器の操作制御専用の装置「オートパイロット」です。オートパイロット開始や終了,舵の角度表示や地磁気センターから得た船首方位が表示されます。オートパイロットのコンピュータはサテライトコンパスではなく,地磁気センサーで船首方位を把握しています。3つの表示装置のうち左2つが「インスツルメンツ」で「サテライトコンパス」で取得した船首方位の値や「風向風速センサー」で取得した風速風向や緯度経度,船速などの情報を常時表示する機器です。表示内容やレイアウトの変更も可能です。船内ネットワークからPCでのデータを受信してデータを取得する機能も搭載しています。
左の画面に魚群探知機を表示し右側にはGPSプロッターと簡易AISとレーダーを重ね合わせた表示例。
オートパイロットの付属機能として,船の舵の角度をリモコンでコントロールできる「デジタルリモコン」。このリモコンはケーブルが長く,例えば,操舵室から外に出て船尾まで行って舵を切ることも可能です。
船上部に搭載されているセンサー。一番左の白い棒状のものが「簡易AIS用ホイップアンテナ」,その右にある小さいポールが「簡易AIS用GPSアンテナ」です。AISとは船の位置情報・移動速度方位を船同士でお互いに知らせ合うことで危険予測・危険回避をして航海の安全性を高める装置です。その右の黒色のものが「風向風力センサー」,一番高い位置にあるものが「サテライトコンパス」で,GPSで船首方位を測定します。一番右にある円盤状のものが「レーダーセンサー ドームタイプ」。レーダーはやまびこの原理で電波を飛ばして船の回りの障害物や陸地までの距離を測って可視化できる装置です。これらのセンサー・アンテナ類はすべて船内ネットワークに接続されています。船底には魚群探知機の送受波器が搭載されており,ネットワーク魚探に接続されて船内ネットワークに接続されています。魚群探知機もやまびこの原理で船の真下に音を飛ばして真下の魚や海底までの距離を測って可視化できる装置です。さらに水温や魚の大きさや海底が砂地なのか,岩場なのかなどの情報も分かります。
船の点検後に,船の始動方法を確認しエンジン始動手順を学びます。
船の点検後に,船の始動方法を確認しエンジン始動手順を学びます。
出港の手順を動画で記録します。後でeラーニングコンテンツとして作成できます。写真は船首側のロープなどを取り外すシーン。
出港手順で船尾側のロープや乗船するための板を陸に置く方法の説明と実践。
出港。港の中でレーダーやGPSプロッターや簡易AISの画面がどのように表示されているのか,確認しています。
小浜湾内に出てきました。現在の電子機器では見えにくい「ブイ」など,前方の海上や海面下に沈んでいる漁の仕掛け網などが前方にないか見張り確認を行いながら進みます。
湾内で魚群探知機にたくさんの魚影が見えました。魚は海底付近に多数いるようです。
魚群探知機に魚の反応があったので検証のため,実際に魚が釣れるかどうか確認します。 竿を出します。水深や魚のいる深さは魚探に出てくるのですが,残念ながらそこまで簡単には釣れません。
ほどなくして,1匹釣れました。
次々と釣れます。
手塚先生も釣りました。
昼近くになったので港に戻ります。
船にはイケスがあり,生きた状態で港まで連れてくることができます。