「海洋ITの今と未来を担う 〜古野電気からのメッセージ〜」と題した,古野電気株式会社による特別講演が,4月22日,京都コンピュータ学院(KCG)駅前校の6階大ホールで開かれ,大勢のKCGの生徒たちが聴講しました。
古野電気は船舶や産業用の電子機器製造販売会社で,1948年に世界で初めて魚群探知機の実用化に成功しました。本社は兵庫県西宮市にあります。
講演では,最初に古野電気技術研究所の西森靖氏が,「古野電気の研究開発 魚探誕生から現在そして未来」と題して,古野電気が魚群探知機の実用化に成功した経緯を紹介しました。この中で,創業者の古野清孝氏が,魚の体は超音波には反応しないという当時の通念にも関わらず,魚の浮袋は超音波を反射するはずという信念を持って開発にあたったことや,船舶の航行時に発生する泡が探知の障害になることから,その発生がもっとも少ない船底の中央に穴を開けてソナーを設置するという発想が,実用化の大きなはずみになったことなど,いくつもの興味深いエピソードが紹介されました。
西森氏はまた,漁業資源保護の観点から,日本でも船舶毎に漁獲量を割り当てるIQ制度導入の動きがあることを紹介し,その場合,特定の魚種や魚体長の魚を識別できる魚探への需要が増えることから,より高精度の魚探の開発に積極的に取り組んでいると話しました。
続いて,同技術研究所の今坂尚志氏が,古野電気における開発業務の仕事内容について,ハード・ソフト両面での設計から始まって,製品の試作,品質検査のための海上実験やフィールドテストへと進んでいく流れを,実例もまじえながら紹介しました。
また,古野電気が総合船舶用電子機器メーカーとしては,世界シェアのトップを占めている一方で,プレジャーボート向けの市場ではあまり強くないことを取り上げて,不得意分野で業績を伸ばすには,社外にパートナーやアイディアを積極的に求める「オープンイノベーション」が重要であることも説明しました。
最後に今坂氏は,古野電気の研究・開発に向いている人材の特徴を,KCGのイニシャルにひっかけて,次のように表現しました。K:考えるのが好き,C:コミュニケーションが好き,G:我慢強い。
KCGグループでは,2015年に当グループと産学連携協定を結んだ古野電気の協力を仰ぎながら,海洋ITの教育に力を入れていきます。本年度から,KCGの応用情報学科に全日制3年課程の海洋ITコース,京都情報大学院大学(KCGI)の次世代産業コースに海洋ITプログラムを新設して,この分野をリードする人材の育成に努めます。