小惑星「イトカワ」への着陸を果たして約7年に及ぶ宇宙の旅を終え今年6月に全身傷だらけになりながら生還,「イトカワ」の微粒子を持ち帰り壮絶な最期を遂げた小惑星探査機「はやぶさ」をテーマにしたKCG第8回天文ワークショップ「おかえり『はやぶさ君』~奇跡の生還」(独立行政法人 科学技術振興機構 支援事業,京都市教育委員会・天文教育普及研究会・NPO法人花山星空ネットワーク・京都新聞社後援)が12月4日,京都コンピュータ学院(KCG)京都駅前校6階ホールで開かれました。はやぶさプロジェクトの主要メンバーのひとりでJAXA准教授の吉川 真 博士が,「はやぶさ」が成し遂げた快挙とそれに至るまでの苦労などを講演,吉川博士や京都大学花山天文台長 柴田一成博士,アマチュア天文家ら6人によるパネルディスカッションも開かれました。小中高校生や一般の天文ファンが大勢訪れ,感動を新たにするとともに,今後予定されている「はやぶさ2」プロジェクトへの夢を共有しました。
※吉川博士は,スライドを使って分りやすく解説
吉川博士は「はやぶさ」や小惑星「イトカワ」の模型を使いながら,「探査機『はやぶさ』が成し遂げた世界初のこと」として,
- 月以外の天体に着陸して地球に戻ってきた
- 地球,月以外の太陽系天体から離陸した
- 大きさがわずか500メートルの天体へ行った
- 小惑星から物質を持ち帰った
- 惑星間を飛行し大気圏に突入した
などと説明。「『はやぶさ』は,大きな感動を与えてくれただけでなく,世界初に挑戦することの素晴らしさと難しさを同時に教えてくれました。エンジンや姿勢制御装置(リアクションホイール)の故障,通信途絶など多くの困難が発生したが,プロジェクトチームのチームワークと忍耐で克服することができました」と話しました。
引き続き開かれたパネルディスカッションでは,吉川博士,柴田博士,KCGの向井 正博士(神戸大学名誉教授),天文教育普及研究会近畿支部長で兵庫県川西市立北陵小学校教諭の成田 直氏,豊中天文協会の茶木 恵子氏,京都情報大学院大学の作花 一志博士がパネリストを務め,「はやぶさ」の快挙と,宇宙に対する夢などについて語り合いました。会場からも「はやぶさ」への感動の言葉や質問が多く出されました。
「はやぶさ」は2003年5月9日に打ち上げられ,「イトカワ」への着陸を果たし今年2010年6月13日,大気圏を通過してオーストラリアに帰還。本体は燃えつきましたが,地球に持ち帰ったカプセルからは「イトカワ」の微粒子が数多く発見され,太陽系誕生の謎を解明する大きな手掛かりになると期待されています。