セドナ・・・プラネトイド.

 2004年3月15日「太陽系最遠の天体を発見した」との発表がありました。この新天体は昨年11月14日に発見され,冥王星の3倍かなたにあり,イヌイット神話の海の女神にちなんでセドナ(Sedna)と名付けられました。 セドナはこれまで太陽系最遠の天体であると同時に,冥王星が発見されて以降最大の太陽系天体となります。詳細はここ
 近年まで最遠の惑星と言われていたのは冥王星です。19世紀半ばルベリエ(1811〜1877:海王星の存在を予告したことで有名)は海王星の外に惑星があることを予言しました。80年年間にわたってローエル(1855-1916:火星の運河を主張した)をはじめプロアマを問わず多数の人々がこの惑星探しに参加しました。1930年になってトンボー(1906〜1997)は小さな新惑星を見つけ,冥王星と名づけましたが,それは月よりも小さなものでした。トンボーはこれに飽き足らずその後も新惑星を捜し求めましたが,冥王星より大きな惑星はないと結論せざるを得ませんでした。
 ところがCCD素子の応用によって,より暗い天体を見ることができるようになり,1992年に冥王星付近に小惑星1992 QB1が見つかりました。その後,続々と発見され,これまでに約800個ほどになりました。これらはカイパーベルト天体(KBO)と呼ばれて,ほとんどは円に近い軌道を描いています。 そして下表のように「最遠の惑星」は何度も報じられてきました。

名称 発見年 近日点距離 遠日点距離 公転周期 サイズ 備考
冥王星 1930 29.7 AU 49 AU 248 y 2300 km 衛星カロン
1992 QB1 1992 40.9 AU 47 AU 292 y 200 km  
1996 TL66 1996 35.0 AU 132 AU 765 y ?  
1999 CF119 1999 38.7 AU 142 AU 862 y ?  
2000 CR105 2000 44.2 AU 416 AU 3500 y ?  
2000 OO67 2000 20.8 AU 1034 AU 12000 y ?  

Sedna

2003 75.8 AU 990 AU 12300 y 1800 km  
 これらの天体では,近日点はすべて40〜50天文単位に収まっていました。つまり,大きな楕円軌道ではあるのですが,もともとベルト付近にあった天体と思われています。しかしセドナでは,近日点は76天文単位,遠日点が約1000天文単位,周期は1万年以上という途方もなく大きな軌道だったのです。
 セドナのもう一つの特徴はそのサイズで,推定直径は1800 km とも言われます。最小の惑星冥王星(直径2300km)と最大の小惑星ケレス(直径900km)の間には大きなギャップがありました。21世紀になってから,KBOの中に Varuna ,Quaoar2004 DW など中間サイズの天体が見つかってきましたが,セドナはそれらより大きく,冥王星に次ぐ大きさです。近日点がこれほど遠く,なおかつこれだけ大きな天体がどのように形成されたのか,その起源は簡単には説明できそうにありません。第十惑星か?それとも長周期彗星の故郷とされるオールトの雲からやって来た天体か?それとも・・・等々の話も飛び交っています。Varuna,Quaoar,2004 DW,Sednaなどは冥王星も含めて,惑星(planet)や小惑星(asteroid)とは別のグループで,プラネトイド(planetoid)という新たな名前も提案されています。100天文単位の範囲にはまだまだ多数のプラネトイドが漂っているでしょう。

KBO: 正確にはエッジワース・カイパー・ベルト天体(Edgeworth-Kuiper Belt Object)
アイルランドのエッジワース(1880-1972)とアメリカのカイパー(1905-1973)が,太陽系の外縁部には氷を主成分とする小天体のベルトがあるだろうと予見していたことから,彼らの名前がつけられた。惑星になりそこなった小天体や短周期彗星の故郷にもなっている。 詳細はここに