ニアミス小惑星      
 2004年3月31日(水)にあなたは何をしていたか覚えていますか?この日の6時半(JST)頃,地球は空から招かざる客がやってきて,きわどいニアミスが起こったのです。そのとき地心からわずかに13,000km, 地球2個を並べた距離だったのです。 この小惑星2004 FU162 は無事に地球のそばを通りすぎていきましたが,今になって思うとゾーとするような事件ですね。実は3月19日(金)にも小惑星2004 FH が43,000km,地球の直径の3倍,のところを通り過ぎたばかりでした。彼らは完全に地球の敷地内への侵入して来ています。その半年前の 2003年9月28日(日)小惑星 2003 SQ222 が8万kmの地点を通り過ぎ,9年ぶりにニアミス記録を更新したばかりでしたが,早くも記録は破られてしまいました。 さらに2002年6月14日,ワールドカップの真っ最中で日本はチュニジアとの試合で興奮の渦にいる頃,サイズが100m弱の小惑星2002 MN が地球のそばを通り抜けていたのです。詳細はここ。世界中の目がTVの中のサッカー-ボールに集中し,この小天体は事前に発見されず,誰にも知られず通り去っていきました。
2004 FU162の軌道 2004 FHの軌道 2003 SQ222 の軌道 2002 MNの軌道 ニアミスアニメ

 小惑星とは文字通り小さいながら太陽の周りを公転している惑星で,2006年3月現在で13万個弱が登録されていますが,発見されて未登録のものが20万個以上も,小さくて未発見のものは無数にあるでしょう。そのほとんどは火星と木星の間にあり数年で公転していますが,地球の付近までやって来る地球近傍小惑星(NearEarthObject略してNEO)が約4000個見つかっています。その中には地球とニアミスを起こすものも少なくありません。NEOは1990年代になってから本格的に探索され始め,ここ数年間で激増しています。2003年12月6日には2回も起ったし,この2004年だけで月よりも近づいた小惑星は10個も見つかっています。ニアミス最新記録。近い将来の小惑星接近については何度も報じられています。「2880年3月に」「2019年2月に」小惑星の地球落下が起こるかもしれない!最新のニュースでは2029年4月の危機が語られています。
 1908年6月末シベリアの森林に,空からの大爆音と共に直径50kmにもおよんで多数の樹木をなぎ倒したのはサイズが数十mの天体の落下と考えられています。今から6500万年前に,1億年以上もの間,地球上をわがもの顔で闊歩していた恐竜を滅ぼし,中生代の幕を閉じたのは高々10 kmサイズの小惑星の落下といわれています
 将来NEOの墜落は起こるのでしょうか?そのとき現在の生物の大半は滅びてしまうのでしょうか?その可能性はゼロとは言い切れません。詳しいデータを集め,正確な軌道計算を行い,正しい予報を行うため,世界中の観測協力体制ができつつあります。NEO探索に最も活躍しているのはアメリカのニューメキシコ州にあるリンカーン研究所の望遠鏡で,わが国でも岡山県に美星スペースガードセンターが設置されています。この緑と水の豊かな地球を守るためには,24時間全天パトロールの完全実施が期待されます。